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分子接合

接着剤と分子接合技術を比較|PPとAlの接着強度・耐久性試験結果を解説

接着剤と分子接合技術では、材料を接合する仕組みが異なります。市販接着剤が主に分子間力によって材料表面に密着するのに対し、分子接合技術は異種材料の界面に化学結合を形成します。
本記事では、ポリプロピレン(PP)とアルミニウム(Al)を市販接着剤および分子接合剤で接合し、初期状態と120℃・24時間の煮沸試験後に引張せん断試験を実施した結果を比較します。
市販接着剤では界面剥離や強度低下が確認された一方、分子接合技術では煮沸後も界面が剥がれず、PP自体が延性破断しました。

 

■この記事で分かること
・接着剤と分子接合技術の接合原理の違い
・PPとAlを接合した試験片の評価方法
・市販接着剤3種類と分子接合技術の試験結果
・120℃・24時間の煮沸試験後に生じた強度変化
・界面剥離とPPの延性破断が示す意味
・分子接合技術を接着剤用プライマーとして活用する可能性

接着剤 vs 分子接合技術

今回は、接着剤と分子接合技術の接着強度を比較した結果をご紹介します。
この結果から、分子接合技術が化学的な結合によるものであることが実感いただけると思います。
接着する材料は樹脂と金属です。この組合せは自動車・家電・産業機器など、多くの分野で必要とされる一方で、「強度が出にくい」「耐久性が不安定」といった課題を抱えています。
特に PP(ポリプロピレン)や PE(ポリエチレン) は、安価で加工性も良い一方で、低極性という特徴により、一般的な接着剤では十分な強度が得られないことが多い材料です。
そこで、PPとAlを各種接着剤および分子接合剤で接着した試験片を準備し、これらの接着強度を測定し、更に信頼性評価として熱湯煮沸後の接着強度を測定しました。

試験方法

試験片

Al板とPP板を市販の接着剤と分子接合剤で接着したもの

 

(市販接着剤)
・エポキシ接着剤(2液)
・シアノアクリレート系接着剤
・変性シリコーン系接着剤

 

(分子接合剤)
・Al板側:MB1015、PP板側:MB1013

評価方法

初期と煮沸試験後の接着強度・破壊モードを、JIS K 6850 に準拠した引張せん断試験で、せん断強度、破壊モードを評価しました。 (煮沸条件)純水浸漬、120℃恒温槽、24時間

試験結果

 

市販接着剤

いずれの接着剤も、PPまたはAlの界面で剥離が発生しました。 エポキシ接着剤は、煮沸試験前に剥離してしまったので、煮沸試験は行いませんでした。 シアノアクリレート系および変性シリコーン系接着剤は、PPと接着剤の界面で剥離し、煮沸試験後に接着強度が低下しました。

分子接合技術

分子接合技術を用いた試験片では、煮沸試験後も強固に接着しており、PPが延性破断しました。
この結果から、「PPの材料強度<分子接合の接合強度」といえます。
この「破壊モードの違い」が、今回の比較の核心です。 (付記)分子接合技術の結果は、PP板の延性破断が生じたので、接着強度ではありません。接着強度は、グラフの値よりも大きくなります。

結果に対する考察~なぜ、ここまで差が出たのか?

一言で表すなら、「結合の仕組みが違うから」となります。では、それぞれの結合に関して、簡単に説明します。

市販接着剤~分子間力に依存する接着

接着剤は、固化した接着剤が被着物の表面に密着し、分子間力で被着体と接合する仕組みです。
分子間力は化学結合よりも結合力は弱い(数〜数十 kJ/mol)ですが、それ以上に決定的な弱点があります。
それは、結合力は距離に依存する(距離が離れると結合エネルギーが急激に弱まる)ということです。
結果として、水・溶剤・熱等の影響で界面距離が広がり、接着力が大きく低下します。煮沸後に接着力が低下したのは、このためです。

分子接合技術~界面に“化学結合”をつくる

一方、分子接合は化学結合による接着で、結合エネルギーは300kJ/mol以上と高く、かつ水・溶剤・熱に対して非常に安定です。今回のせん断試験で、PP と Al の界面が“はがれる”のではなく、 材料(樹脂)がPPの延性破断になったのは、 まさにこの化学結合の安定性によるものです。

まとめ

今回の比較で明らかになった事をまとめます。

接着剤

・分子間力による接着。
・破壊モードが界面剥離。
・界面距離が広がると接着力が大きく低下する。

分子接合技術

・化学結合による接着。
・破壊モードが樹脂の延性破断。
・水や熱などの要因で結合が壊れにくい=長期信頼性が高い。

 

関連した応用例として、分子接合剤を接着剤のプライマーとして使用することができます。下図のように分子接合剤をプライマーとして使用することで、接着剤と分子接合の「良い所取り」することができます。 この件については、別の機会にご説明いたします。

 

 

今回の内容は、動画でも紹介しております。数値だけでは伝えきれない、せん断試験の様子などがご覧いただけます。よろしければ、こちらの動画をご覧ください。

 

 

「難接着材料と金属の接合」や、「接着剤の接着強度や信頼性を改善したい」というご要望がございましたら、お問い合わせフォームからお気軽にお声掛けください。

よくある質問(FAQ)

Q. 接着剤と分子接合技術の主な違いは何ですか?

主な違いは、材料同士を結び付ける仕組みです。一般的な接着剤は、固化した接着剤が材料表面に密着し、主に分子間力によって接合します。一方、分子接合技術は、異なる材料の界面に分子レベルの化学結合を形成して接合します。

Q. 今回の比較試験では、どの材料を接合しましたか?

今回の試験では、PP(ポリプロピレン)板とAl(アルミニウム)板を接合しました。PPは表面の極性が低く、一般的な接着剤では十分な接着強度を得にくい難接着材料の一つです。

Q. 比較に使用した市販接着剤は何ですか?

エポキシ系の2液接着剤、シアノアクリレート系接着剤、変性シリコーン系接着剤の3種類を使用しました。分子接合剤には、Al板側にMB1015、PP板側にMB1013を使用しています。

Q. 分子接合技術ではどのような結果になりましたか?

分子接合技術を使用した試験片は、120℃・24時間の煮沸試験後も接合界面が剥がれず、PP自体が延性破断しました。この結果は、少なくとも今回の試験条件では、分子接合部の強度がPP材料自体の強度を上回っていたことを示しています。

Q. 接合試験や技術相談を依頼できますか?

はい。難接着樹脂と金属の接合、既存接着剤の強度・耐久性の改善、分子接合剤を用いたプライマー処理などについて、対象材料や使用環境に応じた接合試験を相談できます。

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