MB処理を接着剤のプライマーとして使用し、Cu(銅)とAl(アルミニウム)をエポキシ接着剤で接合した際の接着強度と耐久性を検証しました。
JIS K 6850に準拠した引張せん断試験の結果、MB処理なしではAlと接着剤の界面で剥離したのに対し、MB処理ありではAlが延性破壊。
さらに煮沸試験後も破壊モードに変化はなく、強固な接合状態を維持しました。
本記事では、MB処理によって接着強度が向上した理由を、分子接合技術とエポキシ接着剤それぞれの役割から解説します。
■この記事でわかること
・MB処理を接着剤のプライマーとして使用できるか
・MB処理によってCuとAlの接着強度が向上する理由
・MB処理の有無による破壊モードの違い
・煮沸試験後も強固な接合状態を維持できるか
・MB処理とエポキシ接着剤を組み合わせるメリット
・分子接合技術と接着剤がそれぞれ果たす役割
今回は、MB処理を接着剤の「プライマー」として使用した結果をご紹介します。
前回は、接着剤と分子接合技術の接着強度を比較し、それぞれの結合の仕組みについてご紹介しました。接着剤は、表面の微細な凹凸を埋めること(材料間の距離を近づけること)ができますが、材料と接着剤の界面の結合は基本的にファンデルワールス力であり、これが弱点になる場合があります。
一方、分子接合技術は、界面に化学結合を形成することで強固な接合が可能ですが、硬い被着物どうしの接合では点接触になってしまい、強固に接着することができません。
そこで今回は、この2つの技術を組み合わせることで、それぞれの弱点を補うことができないかを検討しました。具体的には、前処理としてMB処理を行ったCuとAlを、エポキシ接着剤で接合しました。
初期の接合強度だけでなく、煮沸試験後の接合強度についても評価しました。
MB処理をしたCu板とAl板を、市販の2液型エポキシ接着剤で接合したもの
(分子接合剤)
・Cu板:MB1013処理,Al板:MB1013処理
比較として、Cu板、Al板ともにMB処理を行わない試験片も準備しました。 なお、接合時には加熱や加圧をしていません。
(煮沸条件)
・純水浸漬、120℃恒温槽、24時間
初期と煮沸試験後の接着強度・破壊モードを、JIS K 6850 に準拠した引張せん断試験で、せん断強度、破壊モードを評価しました。

エポキシ接着剤だけでCuとAlを接合した試験片では、初期状態、煮沸試験後ともに、Alと接着剤の界面で剥離が発生しました。
Cu板とAl板の両方にMB処理を行った試験片では、初期状態、煮沸試験後ともに、Alが延性破壊しました。
この結果から、「Alの材料強度<MB処理+接着剤による接合強度」といえます。
また、煮沸試験後も破壊モードに変化はありませんでした。つまり、煮沸試験で接合力が低下せず、強固な接合状態を維持しました。この「破壊モードの違い」が、今回の試験のポイントです。
一言で表すなら、「MB処理によって接着剤と材料の界面に化学結合が形成されたから」と考えられます。
では、エポキシ接着剤とMB剤が、それぞれどのような役割を果たしているのか、簡単に説明します。
MB剤はCuやAlの表面に化学的に結合します。その際に、MB剤のもう一つの官能基が、界面を覆っている状態になります。
エポキシ接着剤は、CuとAlの間にある隙間を埋める役割があります。
エポキシ接着剤には、以下のような特徴があります。
・未硬化時に被着物界面に濡れ広がり、化学結合ができる距離まで接触できる。
・硬化時に体積収縮が少なく、ガスが発生しない。
・硬化後も化学的に安定で、材料強度に優れる。
・MB剤の官能基とエポキシ基が、化学的に結合できる。
これらの特徴が相まって、Alが延性破壊するほどの強固な接合ができました。

今回の試験で明らかになったことをまとめます。
・MB処理を接着剤のプライマーとして使用することができた。 ・硬い被着物どうし(CuとAl)を接合することができた。 ・無処理と比較して接合強度が大きく向上した。 ・煮沸試験後もAlが延性破壊し、破壊モードに変化がなかった。
今回の結果から、MB処理を接着剤のプライマーとして使用することで、信頼性の高い接着物が得られることがわかりました。
「熱や圧力をかけずに、硬い材料どうしを接合したい」 「現在使用している接着剤の接着強度や信頼性を改善したい」 といったご要望がございましたら、お問い合わせフォームからお気軽にお声掛けください。
今回の内容については、動画でもご紹介しています。数値だけでは伝えきれない、実際の引張せん断試験の様子などもご覧いただけますので、ぜひ以下の動画をご覧ください。
MB剤は接着剤のプライマーとして使用可能です。今回の試験では、MB処理をCuとAlの表面に施してからエポキシ接着剤で接合することで、接着剤のプライマーとして機能することが確認できました。MB処理なしの場合と比較して、接合状態に明確な違いが見られました。
ただし、すべての接着剤に対して、同等の結果を保証するものではありません。
MB剤が材料界面と接着剤を化学的な結合で繋いでいるためです。化学的な結合のエネルギーが材料の強度を上回れば、引張せん断試験で材料が破壊します。
今回の試験では、煮沸試験前後ともにAlと接着剤の界面で剥離しました。
今回の試験では、Alが延性破壊しました。今回の組合せでは、接合強度がAlの材料強度を上回ったと考えられます。
今回実施した耐久試験(純水・120℃・24時間煮沸)では、耐久性があることが確認できました。(試験前後ともにAlが延性破壊)
ですが、耐久性は接着剤の性能に左右される場合があります。ご関心がありましたら、ぜひお問い合わせください。
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