「接着がむずかしい」とされてきたPP樹脂とシリコーンゴム。この“難接着”コンビが、分子接合技術によって確実に、しかも高強度で接着可能になりました。本記事では、実際の接合プロセスや応用例、接着強度について分かりやすくご紹介します。
今回は、PP樹脂とシリコーンゴムという、いわゆる「難接着材料」どうしの接合です。
PP樹脂とシリコーンゴムの分子接合の代表的なプロセスフローは、以下のとおりです。通常は、PP樹脂側のみのMB処理で接合することができます。(PP、シリコーンの種類・特性により、プロセスフローやそのパラメータは変わります。)
分子接合で接着したPPとシリコーンを剥がそうとしても、シリコーンゴムがちぎれてしまって、剥がすことはできません。つまり、分子接合の接着強度は、シリコーンゴム自体の機械的強度よりも強いということです。
また、分子接合は化学結合しているので、耐水性や耐薬品性に優れています。測定例を以下に示します。
PPは適度な剛性がありながらも軽量で、コストを抑えられるという利点があります。一方、シリコーンゴムは柔らかく、熱や水、薬品に強く、密着性に優れています。この2つを組み合わせることで、軽くてしっかりしたPPの構造体に、シリコーンゴムの優れた特性を付与した複合部品が実現します。
PPとシリコーンゴムの複合部品は、私たちの身の回りにもたくさんあります。例えば、歯ブラシの柄を見てみましょう。芯となる硬い部分は、軽くて丈夫なPPでできています。一方、握る部分は手にフィットし、滑りにくいシリコーンゴムで覆われています。これにより、濡れた手でもしっかり握れて、微妙な力加減で歯磨きできるのです。
また、高い信頼性が求められる自動車部品でも、PP/シリコーンゴムの複合部品が採用されています。エンジンルーム内の配線やセンサー類を保護するハウジングには、強度とコストに優れたPPが使われます。そして、熱や振動、油分から内部を守るためのシールやガスケットには、耐熱性や密着性に優れたシリコーンゴムが組み込まれています。これにより、軽量化と耐久性の両立を実現しています。
更に、PP、シリコーンとも生体適合性が高く、滅菌処理も可能なので、将来的には医療機器分野への応用拡大が期待されます。
「PP樹脂とシリコーンゴムの接着は難しい」というのが、世間一般の常識ではないでしょうか。しかし、分子接合技術により、これらの難接着材料を強固に接着することができます。
なお、今回は成型したシリコーンゴムとPPの接着プロセスについて説明しましたが、もう一つのプロセスとして、未架橋のシリコーン(生ゴム)を架橋・成型するのと同時に異種材料と分子接合させることもできます。これを「架橋接着」と呼んでいるのですが、これについては、また機会があればご紹介します。
次回は、平滑銅箔と低誘電材料の適用例について紹介いたします。
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