分子接着接合について

物造過程の高効率化・高機能化・高生産化

1.21世紀の物造産業

グローバル化が進展する21世紀の物造において、性能もさることながら製品の開発速度が競争を制すると言えます。開発速度の律速過程は加工組立過程にあり、具体的には接合技術と金型製造技術にあります。 製品開発計画の立案が容易に可能となり、それを実行するためには接合技術と金型製造技術の獲得が不可欠です。
グローバル社会での熾烈な競争を制するには加工と組立過程を融合化し、高効率・高生産と高性能・高生産を獲得する必要があります。 組立過程を加工過程に融合化する接合技術が加工接着技術であり、加工過程を組立過程に融合化する接合技術が組立接着技術です。

2.接合技術の変遷

物と物をつなぐ接合技術の進歩は有史以来脈々と進歩を遂げて21世紀に至っています。20世紀の接合技術は分子間力接着の時代であり、その端緒は高分子化合物コロイド説にあります。 高分子化合物共有結合説の後も高分子化合物の特性が分子間力に依存すると言う基本理念が接着に導入され、高分子化合物を接着剤に使用した分子間力による流動体接着が20世紀の文明を発展させました。 しかし、極度に軽少短薄を追求する加工・組立技術が要求される21世紀では分子間力接着では用を成さない場合が多々出現しています。流動体接着とは被着体にたいする接着体の「濡れ」に原点を置いた接着であり、接合原理から見れば、接着力の発現が分子間力による場合と化学結合による場合があります。 化学結合の生成による流動体接着は原点が濡れですが、濡れの影響が分子間力による場合より極端に小さいと云う特徴があります。 しかし、従来、異種材料間に化学結合を生成させることは異種材料の官能基に制限があり、困難でした。 分子接着技術を用いる流動体接着は被着体表面に予めジチオールトリアジン基を導入し、あらゆる固体表面を1種類の官能基表面に変換、接着する方法です。 このようにして異種材料間の官能基の違いや濃度と反応性を規格化したのが分子接着接合による流動体接着と言うことになります。

一方、分子接着接合による非流動体接着は接合原理を濡れから脱し、表面反応性におくものです。 濡れに接合原理をおく考え方の背景には表面粗さの問題があります。 濡れにより表面粗さを解消し、材料間を接触させるためです。 非流動体接着では接着体が非流動体であるため、濡れと表面粗さの解消は根本的課題になります。 分子接着接合ではエントロピー弾性体とその表面反応性の付与により、濡れと表面粗さの問題を解決しました。

接合技術における世代変化
世代 接合方式 接合原理 材 料
第1世代 重縛接合 機械的挟付 紐、縄、木皮
第2世代 アンカー効果接合 機械的挟付 釘、ネジ
第3世代 溶接接合 合金形成 溶接金属
第4世代 分子間接合 分子間力 流動性有機物
第5世代 分子接着接合 化学結合 流動性有機物
非流動体

3.分子間力接着接合と分子(化学結合)接着接合

接着剤を用いる分子間力接着接合は接着力発現の原理は濡れにあり、接触面積の全面に分子間力を発現させることを意図しています。 しかしながら、接着体と被着体が十分に濡れたとしても、それが安定に存在しないことが根本的な課題であり、分子間力だけで根本課題を解決することは不可能です。 分子間力は分子間の接触距離の平方根に反比例し、減少するので、一般には0.5nm以上はなれるとほとんどゼロとなります。 分子が絶えず、振動や拡散をして同一状態に留まることはないため、環境が変われば分子間力は極端に変化すことになります。

分子間接着接合の課題と分子接着接合の特徴
接着特性 分子間力接着の課題
加工接着(流動体接着)
分子間接着接合の特徴
加工接着(流動体接着) 組立接着(非流動体接着)
接着力の発現 分子間力 化学結合 化学結合
接着強度 熱・溶剤・振動に弱い 熱・溶剤・振動に強い 熱・溶剤・振動に強い
接着層の寸法 制御不可
微細構造不可
制御不可(μm レベル可)
微細構造不可
制御可能(μm 可)
微細構造可
接着層の挙動挙動 流動体
はみ出し有
流動体
はみ出し有
非流動体
はみ出し無
接着条件 選択肢狭い
接着速度低い
選択肢広い
接着速度高い
低温〜高温可
接着速度高い
材料 依存性高い 依存性低い 依存性低い
機能化 低い 高い(部分接着可) 高い(形状自由)
生産性 低い 高い 高い

分子接着技術は加工接着(流動体接着)と組立接着(非流動体接着)の2方式に分けられます。 両者の共通点はいずれも化学結合の生成によって接着力が発現し、異なる点は前者が流動体による接着、後者は非流動体による接着であることです。

従来の分子間力接着は接着力が分子間力によって発現されるため、環境によって接着強度が変化すると云う根本的課題が存在します。 更に、材料が変われば接着剤が変化すると言う材料依存性にも課題があるのと同時に、接着層の寸法の制御や微細構造の接着も不可能です。 特に、接着剤層の正確な寸法制御は不可能で、接着層のはみ出しは避けられません。 これに対し、分子接着接合は接着剤の使用による分子間力接着の特徴(流動体接着)を有し、かつ強固な接着強度(熱・溶剤・振動に強い)や材料依存性の低い接着を可能にした点に特徴を有する加工接着法で、これまでの接着と全く概念を異にする組立接着法からなります。 特に、組立接着は非流動体でありながら接着が可能であり、接着強度、寸法制御、低材料依存性、高機能性及び生産性に特徴を有する新しい接着接合法と言えます。

4.接着機構

加工接着は加工工程で接着することから名付けられた名称であり、接着体の流動性と反応性を利用して、接着する方法です。 コロナ放電処理によって材料(金属、セラミックス、樹脂及び架橋ゴム)の多くは表面にOH基を生成します。 このOH基はTESと反応して、表面にジチオールトリアジン基を化学結合で生成する。 ジチオールトリアジン基含有材料表面は材料B(めっき液、樹脂及び未架橋ゴム)と接触して反応し、材料Aと材料B間に化学結合を生成して接着接合をします。

組立接着は組立工程で使用されることから名づけられた名称であり、接着体のエントロピー弾性機能と表面反応性を利用して接着する方法です。 材料A,C及びE表面のジチオールトリアジン基が接触中に空気で酸化されてSS結合を生成して接着します。 酸化反応は触媒の特性により、低温から高温までの広い温度範囲での接着を可能としています。